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2017.03.30

手の届くクラシックカー、ベスト8 その2 ーー ランチア・アプリリア、オースチン・ヒーレー・スプライト、ロールス・ロイス・シルバー・シャドー、アルファ・ロメオGT1600ジュニア

ランチア・アプリリア・ルッソ(1936〜1949)

アプリリアは、シトロエンのトラクシオン・アバンとともに革新をもたらした戦前のモデルとして殿堂入りすべきだと思う。それにもかかわらず、このリトル・ランチアは忘れられがちである。夢想的エンジニアであったヴィンチェンツォ・ランチアのアイデアは、バティスタ・ファルチェットとジュゼッペ・バッジによって現実のものとなった。ピラーレス・モノコック・ボディや完全独立サスペンション、アルミ合金ブロックV4をはじめ、この小型サルーンには当時の先進技術が満載されている。あまりに時代を先取りしたため、エンジンが1.5ℓにアップグレードされた以外ほとんど変更されることなく13年間も生産されたほどだ。


英国には50台しか現存しないため、今回の予算ではコンクールに出るような個体は到底手に入らない。だから、38年モデルが予定競売価格1万から1万4000ポンドでヒストッリクカーオークションに出品されたときはとても驚いた。実際の落札価格は諸費用込みで1万6240ポンド(300万円)。このモデルの最高額(7万ポンド)にならなかったのは、ノンオリジナルの箇所が多く、ドア・ロックなどが欠品していたためだ。

しかし、アプリリアは最高出力49psの迫力あるV4エンジンを搭載しており、とても使い勝手がいい。走り始めは回転をかなり高める必要があるけれど、あとは元気よく走ってくれる。4速のギアボックスは素晴らしい出来で、ステアリングは軽くて精密。ハンドリングも極上で、大型のインボード・ドラムをリアに採用したブレーキも強力だ。

四角形の計器類とランニングボードのために価格は伸び悩んだ。この個体は、方向指示器が交換されているうえ、電気系統を12Vへ変換するなど実用的改良がいくつか加えられている。


アプリリアがミニと同じように総合力に優れるモデルとなった理由は、空力に優れたボディ形状、乗降に便利な観音開きドアなど多数ある。また、他のお値打ちのランチアと同じように、高級モデル並みの丁寧な方法で製造されている。

今回の個体は、長期間保管された後、2008年に再び実走可能な状態に整備された。2010年からはランチアのプロであるオムニクロン・エンジニアリングが整備を手掛けている。


同社のマーティン・クリフに話を聞いた。「アプリリアの長所というのは同時に短所でもあります。一見シンプルなクルマですが、先進技術を採用しているので維持にお金がかかることもありますね。不安定なパーツ供給や、最近まで評価が低かったこともあって、オリジナルを保つものや手厚い整備が施されたものはあまりありませんよ」

例えば鋼板は薄いために錆びやすい。特にフロア、二重鋼板になったトランク・リッド、サイド・シルは錆びが目立つ。同じようにエンジンのアルミ合金ブロックも腐食しやすく、ヘッド内部のコア・プラグも酷く錆びていた。フロントのスライディング・ピラー・サスペンションをはじめ、大半の修理作業には特殊なツールが必要で、リアのサスペンションも巧妙な仕掛けだから、複雑で壊れやすい。


「それでもこのクルマは素晴らしいのひと言に尽きます。妥協を許さない開発を進めたため、製造にかなりのコストが掛かったでしょうね。ランチアが倒産したのも無理のないことですよ」

市場に出るアプリリアの価格には大きな開きがある。これはもはや見過ごせないクルマになってきた証拠である。それゆえ、画期的なエンジニアリングは楽しめないが、903ccエンジンのアルデアで手を打つのも賢明だ。ただ、もしそのつもりがないなら、今すぐアプリリアを買うべきだ。

ランチア・アプリリア・ルッソ

生産期間 1936〜1949年
生産台数 27642台
エンジン形式 アロイブロック鋳鉄ヘッドV4OHC1352cc、ゼニス32/VIMまたは36VI-2キャブレター
変速機 4速M/T 後輪駆動
サスペンション (前)スライディングピラー
(後)トレーリングアーム/トーションバー
ステアリング ウォームアンドセクター
ブレーキ (前後) ハイドローリックドラム(R:インボード)
0-96km/h 35秒
最高速度 125km/h
現在中古車価格 280万円〜1300万円



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